千葉県千葉市の加藤歯科・歯科医・歯医者では審美治療 ・メタルフリー治療・矯正治療 ・歯周病治療・インプラントの治療を行っております。
2011.8
院長 加藤昭浩
数年前にNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で紹介された番組を御覧になった方も多いと思
います。私は放映後に書籍化されたものを誰かに薦められて、1年ほど前に購入してしばらく放置し
ていました。
「奇跡のリンゴ」は今から25年ほど前に、無農薬、無肥料でリンゴの栽培に成功した人の実話
です。「ニュートンよりもライト兄弟よりも偉大な奇跡を成し遂げた男の物語」
と本の帯に書いてあります。「まさか!?」と感じるかもしれないけど、たぶ
ん、100年後にはそういう風に言われているかもしれません。
リンゴの生産に農薬を使うことはリンゴ農家にとっては、算数の定理レベルの
「常識」なのです。りんごだけじゃなく、現在の農業は化学肥料と農薬無しでは
収穫することができないのが現実です。つまりは石油で農産物を産み出している
わけです。原発事故以来、エネルギー問題が大きくクローズアップされています
が、我々の食料を確保する為にも多くのエネルギーが使われているということは
忘れがちです。石油の存在に依存する農業は持続不可能な農業です。それに引き
替え、主人公である木村さんの農法はリンゴだけじゃなく、米や他の作物も無農
薬、無肥料で作るのだそうです。これは将来にわたって持続可能な農法です。 彼
の農園には国内からだけじゃなく、海外からも視察にやってくるそうです。今、世界はいずれ枯渇す
るであろう化石エネルギーの終焉に備えて、持続可能な農業を模索しているのです。
「りんごの木からりんごが落ちるのを見てニュートンが万有引力を思いついた」という作り話は
有名です。彼が見たとされるりんごは、我々が目にするリンゴではありません。当時のリンゴは直
径約3cmほどの甘くない果物です。ヨーロッパにクラブアップルという作物がありますが、それに
相当します。新大陸への入植とともに苗木も渡り、品種改良が施され、今のような大きく甘い果実
を作り出すことに成功しました。その果実はヨーロッパに逆上陸し、世界的なブームとなりまし
た。日米修好通商条約批准の特使としてアメリカに渡った新見豊前守が日本に苗木を持ち帰ったと
いう記録があります。明治になり、農業育成のため国策として新政府の税制に対応すべく、現金収入
になる商品作物を奨励していました。 その一つが西洋リンゴで、大量の苗木を輸入し、接ぎ木で繁
殖させ全国に配布しました。しかし、リンゴは病害虫が多く育てるのが大変でした。暖かい地域で
は養蚕が多く行われましたが、青森は寒すぎて養蚕には不向きでしたので、リンゴ作りに必死の努
力を続けることになります。その時代は農薬が一般に使われ始めた時代でもあります。ですから、リ
ンゴと農薬、化学肥料はともに歩み、もしも、農薬がなければりんごを育てることは不可能であっ
たとも言われています。
主人公である木村さんは農家の次男で「木村家」に婿養子に入った人です。当然、りんご農家に
婿養子に入ったわけですから、今まで通りのりんご栽培をはじめました。「今
まで通り」とは農薬、化学肥料に頼ったりんご栽培です。しかし、彼の奥さん
は農薬の過敏症がひどく、一度散布すると1週間も寝込むようになります。あ
る日、本屋で無農薬栽培の本を落として汚してしまい、結局購入しました。し
ばらく「積ん読」状態だったのですが、読んでみると、その思想にハマり、無
農薬でりんごを栽培することを夢見てしまいます。最初の数年間は害虫や感染
症のために葉が残らず、全く収穫できません。世の中で良いと言われること、
できることはすべてやったにもかかわらず、徐々にりんごの木が弱って行き、
花も咲かなくなります。できることはすべてやり尽くした6年目の夏の夜、すべてを終わりにしてし
まおうと、岩木山の麓で死に場所を探していた彼の目に、野生のりんごが目に入りました。何も手
入れなどしていない場所で見事に実った「りんご」。よく見ると、それはドングリでした。しか
し、害虫に食われずに、キレイに実をつけているのはなぜか?生態系の微妙なバランスの中で生き
残っているわけです。その時彼は「この柔らかな土壌、この自然な環境がこの豊かな生態系が成り
立つ理由なのではないか」と思い到るのです。自分が首つりをしに行ったことも忘れ、彼はりんご
畑に戻り、リンゴ畑の土壌改良に取りかかります。大豆を植え、地中の窒素量を増やしつつ、雑草
を刈らず、土の軟らかさを取り戻します。その結果、徐々にリンゴの木は元気になり、春にはついに
リンゴの花が咲き、翌年、無農薬でリンゴを実らせることについに成功します。彼が8年も無農薬
のリンゴ作りを諦めなかったのは、水田では米、野菜はりんご畑の隙間に植え、すべて無農薬で作
ることに成功していたからです。キュウリ、トマト、ジャガイモ、メロン、大根、カボチャ・・。彼
が無農薬で作ることのできない作物は唯一、りんごだけだったのです。 まあ、私のダイジェストじゃ感動しないと思います。(笑)是非、本をお読み下さい。私の文章で
は、まるで「根性モノ」のようなストーリーですが、そんな簡単なことではリンゴの無農薬栽培は
不可能です。木村さんは外見からすると「ただの田舎のオヤジ」ですが、計算が得意で帳簿や経理
に明るく、収益予想もでき、さらには機械工作の達人で、エンジンのチューンアップは得意。そし
て、おそらく農業に関する本はすべて読み尽くしたのではないかと思われるほど理性的な人です。
本の途中から、涙が溢れてきました。泣きながら読んだことも初めてですが、3回も読んでしまっ
たのも初めてです。さらにはDVDまで購入しました。将来、何度も読み返すことでしょう。読むた
びに思うのは、自分は「諦める」ことに慣れてしまっているんじゃないか?いつもどこかに別の道
があって、それを探し出すことに長けてしまったのではないか?「愛」や「感謝」などと軽々しく
使うけれど、本当の「愛」や「感謝」には私が思っているよりも遥かに強いパワーがあるのでしょう。「バカになればいいんだ」という言葉に込められた木村さんの真意を理解するのは相当に難し
いことでしょう。彼には歯が1本もありません。ビデオの中で「私はりんごの葉と自分の歯を引き
替えにしたのさ」と笑います。彼はよく笑うので油断してしまいますが、たぶん、あの明るさは地獄
の入り口を覗いた人間だけが持つ、突き抜けた明るさなんでしょう。 本を読むたびに、ビデオを見
るたびに心の奥底を掴まれ、魂を揺さぶられる、そんな本でした。
近頃の歯周病専門医は「口臭外来」を標榜している人がいます。歯周病専門医じゃなくても口臭に
積極的な先生も増えてきました。大学病院の口臭外来では患者の呼気をガスクロマトグラフィーで調
べてくれます。単に「クサイ!」という感覚的な評価が、メルカプタンなどの化学物質を数値化して
表示するだけですけど(笑)、数値化することで客観的に比較できる様になります。
口臭で悩んでいる人の3割は自臭症という「本人の思い込み」が原因の疾患です。周りの人は臭く
感じていないのに、「自分はクサイ」と悩んでいる患者です。機械を使って計測し、数字でゼロであ
ることを表すことで、思い込みがなくなる事で治癒を期待しています。
そうではなく、実際にクサイ(メルカプタン濃度が高い)のに、未治療の人がたまにいます。これ
は日本人の悪い癖ですが、家族や夫婦ですら、そのことをハッキリと指摘できずにいる場合です。
もっと悲しいのが、かかりつけの歯医者が治療できず、治療放棄していながら、その患者さんを定期
的に呼んでおいて「まだ大丈夫!」と言われていただけの方が来院された時です。「まだ落ちてな
い!」って、言われるだけのために通っていたとすれば、いったいその定期検診って何? (涙)
メルカプタンは歯槽膿漏だけじゃなくて根尖病巣や不完全な根管治療の場合にも発生します。
歯科には昔、病巣感染説という都市伝説のような話がありました。口腔内の病気(根尖病巣など)が口
から遠い臓器で、リウマチや悪性腫瘍、難治性疾患の原因となる、という説です。1910年代に盛り
上がったのですが、抗生剤の普及とともに下火に成りました。1995年以降、DNA検査の結果を受
けて、またちょっと盛り返しつつあります。 先日、例の矢山先生のセミナーでメルカプタンが主たるテーマでした。ごく初期からセミナーに参
加している歯科医が講師を務めました。彼が語った内容はメルカプタンの信じられない為害性でし
た。病巣に直接的に為害作用を及ぼすのではなく、メルカプタンの存在が次の炎症反応の引き金と
なるのだそうです。まあ、例のゼロサーチによる診断でわかるので、私には再現不可能です。
御存知のとおり歯周病の病巣は歯周ポケットです。メルカプタンはポケット内を棲家とする嫌気性
菌(酸素が苦手なバイ菌)が作り出します。これは口臭の原因となるだけじゃなくて、(私の想像です
が)血流に乗って全身にバラまかれます。(口腔内細菌が全身にバラまかれることはDNA検査で証明
されています。)これを防ぐためには、今よりもきびしい基準を適応する必要がありそうです。「と
りあえず残しましょう」とは、もう言いません。(笑)
もう一つの発生源である根尖病巣に対しては、かなり甘い対応をして来たかもしれません。自分
が居た鹿児島大学歯学部第二保存科は、今では名前と診療内容を変えて歯周病科となりましたが、
私が学生教育していた頃は根管治療(歯の根の治療)も担当していました。器用な私は、大学にやっ
て来る患者さんの主訴である、下手な根管治療のやり直しに燃え、見学する学生の前で「神の手」
を見せびらかしていた時期があります。(笑)歯科用マイクロスコープも無く、歯の長さの正確な計
測も出来ない時代の虚しいお話です。根尖病巣への甘い対応はこの根拠の無い自信が原因です。「俺
なら治せる!」って思う姿勢は大切でしょう。しかし、その歯の存在がより重大な問題の原因と
なっているならば、無駄なプライドですね。
歯周病に関しては中途半端な状態はやめて、必要があれば歯周外科手術あるいは抜歯する。大き
な根尖病巣を持った歯は、抜歯を第一選択としようと思います。まあ、当然、患者さんの希望が優
先しますが・・・・。(笑)
編集後記
もう気づいている方も多いと思いますが、このニュースレターをかとう歯科のHPに掲載しています。ニュースレ ターになる前の「ひとこと」7編はありません。ニュースレターは2006年にスタートしてますから、内容的には5年前の話 なんですよね。2ヶ月ごとに律儀に発行していますね。「今月はサボりたい」症候群に打ち勝った汗と涙の結晶です。 (笑)HPを管理してくれている大野君(患者さんでもありますが)に勧められてHPに載せたんですが、7月中旬まで第3 号は抜けていました。理由は内容があまりにエキセントリックだったし、家内の病気のこともばれちゃうし、全世界へ発信 する内容ではないなと思ったんですよ。でも、そこだけ抜けちゃうのもおかしいし、抜けてしまうと前後の繋がりから、書 いてある意味が分からなくなる弊害もあるんで、内容をマイルドにして公開しました。ちっともマイルドにはなってません けどね・・・。再掲載にあたり、多少書き直した分もあります。昔の文章を今読むと、ちょっと「イマイチ」な表現であっ たり、冗長さを感じてしまうんで・・・(超エラそう)。 HPの世界はかなり怖い世界でもあります。インプラントの症例 が「2ちゃんねる」で話題になったら、一気にアクセス数が増えました。どういうコメントを書かれているのか、気になっ て覗いてみると、悪口じゃなくてホッと一息ってこともあります。 最初から読むとけっこう面白いですね。自分のことを自分が書いたのに、読んでて笑ってしまいます。患者さんを洗脳す るつもりはないけど、内容はかなりディープで患者さんの人生を「偏向」させちゃうでしょうねえ・・・。(笑)でも、ウ ソは全くありません。もし、間違いがあったら、それは私が間違っているということです。悪意を持って間違っているので はありません。第1号から読み直した率直な感想は「怪しい歯医者」ですね。近頃はHP経由で来院される方も多いのです が、みんなここを読んできたのか、読まないで来たのか、非常に興味あります。インプラントの方は症例が多すぎますね。 少し減らそうかな。似た症例は削除しましょう。矯正治療単独の症例がほとんどありません。矯正治療は前後の顔写真を出 さないとインパクトがないので、悩みどころでもあります。ああ、私の矯正治療も途中だった・・・。奥歯のブラケットが ハズレているんですが、やってもらおうと思っていた先生がアメリカに行ってしまいました。ついに家内に頼まないといけ ないんでしょうか。どうしましょう・・。どこかに優しくて若くて美人の先生知りませんか?できれば歯医者で。(笑)