千葉県千葉市の加藤歯科・歯科医・歯医者では審美治療 ・メタルフリー治療・矯正治療 ・歯周病治療・インプラントの治療を行っております
2007.4
かとう歯科HP(かとう歯科、美浜区で検索可能)
http//:www.painlessdentist.net
今回のひとことは大真面目に「人は一生自分の歯で食べることができるのか?」というテーマで書いて
みたいと思います。総論と虫歯、歯周病の話を書きます。このテーマじゃ、残念ながら最後に「オチ」は
ありません。(笑)
私はときどき患者さんに「このまま頑張れば一生自分の歯でいけますよ。」と言うことがあります。で
も、私が御世辞を言っていると思っている方がいるようです。私は診療室ではほぼ99%ウソは言いませ
ん。治療ミスも隠しませんし、隠せません。そういうレントゲンのシステムになってます。治療を失敗し
たら「ごめんなさい」と言います(笑)。私は説明の時に確率を口にします。「インプラントは95%程度
の確率で10年以上もちます」とか「インプラントを1本入れたときにあとで『痛い』という患者さんは2
割ぐらいです。」とか。「データがあるのか」と言われれば、ある場合もありますし、無い場合もありま
す。「私の過去の臨床での印象と論文によれば」と付けるのが正しいでしょう。
先ほどの「一生自分の歯で・・・」は臨床上の印象によるのですが、その予想が当たる前提条件は
1・口腔内衛生レベルが維持されること
2・定期検診を続けて受けることです。
1・の衛生レベルが維持されることは当然ですね。歯みがきがいい加減になることですから、歯周炎は再
発します。2の定期検診を受ける必要性を感じていない方もいるでしょう。気持ちとしてはわかります
が、高いレベルの口腔衛生状態を維持できているかどうかはチェックしてみないとわからないのです。私
自身でもわかりません。ですから私もときどきPMTCをしてもらいます。
ほんの数十年前まで「人生50年」と言われた人類が今や「人生80年」は当たり前なのです。80-50=30
その30年をどうするか?50年で人生が終わったら今の日本人の90%ぐらいの人は「一生自分の歯で食べ
られた」ことになると思います。
一般的に「歯を失う原因」の半分が「歯周病」で残りの半分が「虫歯」です。「外傷」で失う方が少し
います。歯周病は進行する時にはほとんど自覚症状がありません。「歯周病で歯を失う」直前にはじめて
自覚症状が出て、歯茎が腫れたりします。「最後の瞬間」はグラグラして抜けるわけです。 皆さん乳歯が
抜けるときの経験があるので歯が抜ける感覚はわかると思います。 乳歯の時も抜ける直前までグラグラに
ならなかったように、最後までわからないのです。
それでは「虫歯で歯を失う」とはどういうことなのでしょう。今の時代、未治療のまま崩壊することは
稀でしょう。それなりに治療しているのに抜かなくてはいけなくなるのです。神経が残っていて歯を抜く
ことはまずありません。抜く原因の一つは「キチンと根の治療ができていない」ために歯茎が腫れて、中
には顔まで腫れて、腫れた原因となる歯を抜くのです。痛みの原因である歯を抜くのですから、これなら
多少諦めもつきます。原因のもう一つはキチンと根の治療ができていて、差し歯が入っていたのに、土台
の歯が折れたための抜歯です。キチンと治療できていても最終的に抜歯になることが多いのです。なぜキ
チンと治療してあるのに折れるのでしょう。それは「神経」を抜いてしまったことが原因なのです。神経
がなくなると歯が乾燥して折れやすくなります。木の場合、枯れた「材木」と根のある「木」とどちらが
折りやすいでしょうか?歯も同じなのです。それならば、なぜ神経を取ってしまったのでしょう。痛みが
ひどくて神経を取る以外の選択肢が無い場合は私も神経を取ることがあります。「いや、痛くなかったの
に神経を取られた」と言う方もいるでしょう。ブリッジの土台にするときに将来痛くならないように「予
防的」に神経を取ることが悪いことと思われない時代もありました。また保険治療の最大の欠点だと思う
のですが、神経を取る治療をするとお金がもらえて、取らないように努力してもお金はもらえないので
す。取らないようにする努力は本当の意味で「患者さんのため」なのですが、正当に評価されることは稀
です。努力したにもかかわらず、結果として痛みが出てしまえば「ヤブ」と言われ(笑)、収入もありま
せん。皆さんが歯医者ならどうしますか?痛くないのに神経を取りますか??
ですから、虫歯にも歯周病にもして欲しくないのです。プラークのコントロールをして欲しいのです。プ
ラークコントロールで虫歯も歯周病も防ぐことができるのです。プラークコントロールがキチンとできて
いるかをチェックしに来て欲しいのです。本当の意味での「予防」をして欲しいのです。
簡単に、なぜ虫歯ができるかを説明しましょう。
虫歯になるためには4つの要素が必要です。
一つは歯、二つめはバイ菌、三つ目はエサである糖、4つ目はその3つが混ざってバイ菌が酸を作り、そ
の酸が歯を溶かす作用をする時間です。当然ですが、歯がなければ虫歯になることはありません。歯が
あっても溶けにくい堅さがあれば虫歯になりにくいわけです。フッ素は歯質を強化することで作用しま
す。次に、虫歯菌が口の中にいなければ虫歯になりません。あまり知られていませんが、最初からバイ菌
を存在しないようにすることもできます。生まれてからだいたい3歳までショ糖(砂糖)を一切与えない
と虫歯菌のいる場所が口の中に出来上がらないので、それ以後砂糖のある食べ物を食べても虫歯にはなり
ません。この方法は現実的にはなかなか難しいし、普通の人はすでに虫歯菌が定着しているので歯ブラシ
でプラークコントロールするわけです。3番目はいわゆるシュガーコントロールと呼ぶモノです。砂糖の
入ったガムじゃなくてキシリトールのガムにするとか、普通のコーラはやめてノンシュガーコーラにする
とかですね。4番目はその3つが作用する時間を短くするわけです。歯とバイ菌と砂糖が出会ってもその
時間が短ければ被害が少ないわけです。
以上のことを横に時間軸をとって絵を描くと、上のようになります。一日3回、食後にはPHが下がり、虫
歯危険ゾーンに入りますけども短時間で再石灰化ゾーンに戻れば虫歯が進行することありません。しか
し、間食回数が多かったり、何気なくアメをなめていたり、砂糖の入った飲み物をチビチビ飲んだりする
と、長い時間虫歯危険ゾーンにいることになります。そして夜寝る前に甘いモノを食べると、寝ている間
は唾液の出る量が減りますから、酸を中和する能力が低く、確実に虫歯になります。
次に歯周病についてです。・・・ははは。疲れました??ここからが本題です。
まず最初に歯周病は「伝染病」であることを理解してください。誰から伝染するかというと7割が母
親、3割が父親と言われています。これはDNAを調べることができるようになってわかったことです。で
すからキチンと治療をしなければ、その人の母親の口腔内状態が将来の自分の姿になるわけです。逆に言
えば、たとえ母親が早期に総入れ歯になった人でも早い時期にキチンとした治療、定期検診を受けること
で治療もできるし、発病前ならば発病すら抑えることができるということです。正しく理解して頂きたい
のは、歯周病は伝染病ではありますが、遺伝病ではないことです。遺伝ならば避けられない運命ですが、
伝染ならば治療も予防もできるということです。
特定の病原菌の伝染を受けていない方でも、不十分な口腔内衛生や喫煙により歯周病が発症します。し
かし、特定のバイ菌を持ってない方は一般的に治療も楽ですし、悪くなるスピードも緩やかです。私が
「このまま頑張れば一生自分の歯でいけますよ。」と言う方はこういうタイプの方です。
10年ほど前までは歯周病は単に歯の無くなるだけの病気でした。治療する側から言わせてもらえば歯
磨きをしない患者さんへの脅し文句は「入れ歯になりますよ!」ぐらいでした。しかし、今では「早死に
しますよ!」と言って間違いないぐらいの証拠が揃ってきています。ですから脅し文句が冗談じゃすまな
い話になったので、脅すことなどできなくなりました(笑)。こんなことになったのもDNA解析のおかげ
です。バイ菌は人間よりも簡単なDNA構造を持っているので早い時期に菌の種類をDNAで判定することが
できました。1997年頃、アメリカで心筋梗塞で死んだばかりの人を解剖して心臓の冠動脈に詰まった血
栓に含まれる細菌をしらべたのです。そうすると予想外の発見がありました。見つかったバイ菌で一番多
かったのは肺から入った細菌でした。しかし、なんと2番目に多いのが口腔由来の細菌だったのです。こ
れはセンセーショナルに伝えられ、News Weekが「FLOSS OR DIE!」「糸ようじをするか、さもなくば
死か!」という表紙でアメリカ国民に伝えたのです。日本でもしばらくして訳本がでましたが、まったく
ブームになりませんでした。その後、研究が進み、今では「歯周病由来」の病気として高血圧、心筋梗
塞、糖尿病、脳血栓、早産、流産などがあげられています。歯周病が関与すると言われている病気はいず
れも高額な医療費のかかる疾患ばかりです。早期に治療すれば単に歯が残るだけではなく、国民全体の医
療費を減らすことができます。本当のことを堂々と言えない歯科医師会も情けないですね。なぜ言えない
か、見合う保険点数じゃないし、歯周病をキチンと治せる歯医者がほとんどいないからです。まあ、お国
の心配をするよりも皆さんに正しく理解していただき、御自分の家族やお友達を救ってあげてください。
口が臭いことはエチケットだけの問題じゃないということを教えてあげてください。身の回りの人が心筋
梗塞や脳血栓や糖尿病で死ぬよりは、嫌われても指摘してあげた方がその人の為になると思いませんか?
最後にひとこと。
皆さんから「どんな歯磨き粉がいいのですか?」と質問されますが、私は歯磨き粉は全く使わなくて良
いと思います。患者さんが間違っていることの一つは歯磨き粉を「虫歯を治療する薬」と勘違いしている
ことです。CMで「虫歯を予防する歯磨き」という表現がありますが、治療と予防は別のモノです。穴の空
いた虫歯にフッ素を塗っても穴が塞がるわけではありません。「再石灰化」とは電子顕微鏡レベルの出来
事なので目で見えることはありません。さらに、歯磨き粉の問題点は研磨剤が入っていることです。「キ
チンと磨く」という意味を「歯磨き粉をいっぱい付けてゴシゴシ磨く」と思っていませんか?研磨剤とは
台所のクレンザーと同じ効果を生むものです。クレンザーを使って鍋を一生懸命に磨いたらどうなります
か?鍋に穴が空きませんか??歯磨き粉も同じ効果を生みます。歯を削ってしまうのです。その結果、歯
が凍みることもあります。虫歯にならないように一生懸命歯磨きをして、自分で歯が凍みるようにしてし
まうことがあるのです。無駄な行為と思いませんか?研磨剤は茶渋などを落とすために入っています。も
し、使うならば歯ブラシのナイロンだけで充分に(最低約5分は必要ですよね)プラークを落とした後に、
ほんの少しだけ歯ブラシに付けて、歯の着色が落ちたのを鏡で確認しながら使ってください。