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かとう歯科ニュースレター Vol.15

2008.6

　ここのところ毎日ブログを書いています。よく話に出てくる 鹿児島の後輩がHPを立ち上げてブログを始めました。なんと、開 設から今まで毎日書いているのです。ちょっと刺激を受けて私も 毎日書いているわけです。ブログはHPよりも簡単に修正ができる ところが受けて一時期ブームになりました。でも、ブームとか流 行に興味のない私は完全に取り残されました。
　歯医者のブログはどうしても「患者さん集め」のために書いて いる人が多いのでしょうね。「今日インプラントの講習会に行き ました。」「インプラントを３本埋めました」・・・。そういう ブログはイヤだったから私の中にあるもう一つの興味、もしかし て歯科もその中に含まれている「健康オタク」についてのブログ にしようと思ったんです。これなら私が日常的に考えていること の多くが含まれると思います。歯科の話もアリですし、気功も大 丈夫、食事も大丈夫、ありとあらゆる健康を目指す内容なら全部OK 。

　「健康」というのはそれ自体が目的にはなりません。前提条件なのです。「健康だから長生きして も楽しい」のであって、健康じゃないからせっかく長生きできてもあまり楽しくないわけです。健康 な状態にしておくと日常のイベントをより楽しめるのです。
「健康」にメタボのような数値目標があるわけではありませんから、各人が設定した望ましい状態を １００％とすればいいでしょう。「自分が２０歳の時の状態」を１００％に設定してしまうと苦しい ですね。肌のハリ、艶、疲れない体力、持続力。ハハハ、無理・・・。あるいは「○○さんよりも 上」。これはわかりやすいけど下品ですね（笑）。
　一説によると人間は１２０歳まで生きることができるそうです。身体に悪いとされるいろいろな影 響で８５とか９０とかで寿命を迎えると考えているわけです。「アンチエージング（抗老化）」医療 のジャンルですね。私の個人的な趣味とイコールです。私から見て１０歳ぐらい簡単に若返ってしま う女性を産み出すことのできるインプラント治療もこの分野の一つと言って良いと思います。あら ら、趣味と仕事が合体して、新しい「趣味」になっちゃった・・・。50歳からは歯科にとらわれない 健康活動を天命と思って頑張ることにしましょう。

院長　加藤昭浩

ひとこと　その23　「水銀の話」

　ある健康関係のセミナービデオを見ました。「１２５歳まで元気に生きる」なんて本を出して いる先生がやっているセミナーです。内容は、アメリカでけっこう流行しているキレーション治 療です。キレーション治療とはEDTAという薬品を静脈注射して体内の有毒金属を排泄させる治療 です。もともと鉛中毒の治療法でしたが、解毒治療を受けた心臓病患者の心臓の状態が以前より も良くなったことから発達しました。EDTAはカルシウムにも強く反応するので、血管壁に沈着す るカルシウムも溶かし流してしまおうといういかにもアメリカ的な治療です。たしかに臓器移植 で心臓、腎蔵などは新品になっても、臓器を繋ぐ血管が「ボロ」では意味がありません。と言っ て、血管を全部交換することはできません。そこで、血管にEDTAを流して動脈硬化の原因である カルシウム沈着を溶かそうというわけです。今アメリカで大規模な治験中らしいので興味のある 方はその結果が出てからやってみてください（笑）。完全に自費ですが、初診料 １２万円、注射１回３万円です。ふつうは注射を１０回ぐらいやるようです。 　私はそっちよりも運動でなんとかしたいと思ってますので、キレーションはや りたくありませんが、有害金属のチェックはしてみようかなと思いました。検査 は簡単です。髪の毛の根元３ｃｍを採って送るだけです。１回10500円です。 　忘れたころに結果が戻ってきました。日頃これだけ食事や生活に気をつけてい るのだから、自分は超優良だろうと思っていたら、結果は・・・えっー！！異常 値があります。全体にもかなり高い数値が出ていました。ここで調べる有害重金属とはベリリウ ム、アルミニウム、ニッケル、ヒ素、カドミウム、スズ、水銀、鉛です。大まかに言うとベリリ ウムは大気汚染に、アルミニウムはアルミ鍋、上水道水の浄化に必要な薬剤として、ニッケル、水 銀は歯科用金属として、ヒ素、水銀はマグロなど魚介類から、鉛は水道管か ら、取り込まれることが多いのです。

私の場合、水銀が異常値まで上がっていました。ベリリウム、ヒ素、カドミ ウムが多めでした。「銀歯は身体に悪い」「アマルガムは万病の元であ る」・・・。見た目にも悪いし世界的に悪者になりつつあるアマルガム充填を 私は積極的にはずして来ました。はずすには当然削るわけで、削ると発熱し水 銀が気化します。気化した水銀は吸い込まれて呼吸器から体内に入ります。と いうことは・・・。もしかして、歯科治療をすること自体が原因？食っていけ ないじゃん・・・。さっそく防毒マスクを購入しました。世の中にはいろいろ と便利なものがあるんですね。
　私の水銀の値が高いということは歯科医療従事者は体内の水銀濃度が高いのではないか？と思 い従業員全員の計測をしました。もしかして食事も影響があるんじゃないかと思いうちの長男も 検査しました。私、姉、家内、長男、A、Bの全部で６人分です。
　ここで簡単に水銀の話をすると、金属水銀は常温でも気化します。水銀は今でもいろいろなと ころで利用されています。水銀灯や蛍光灯に入っているのは御存知と思います。その他に電池、 塗料、パソコンの液晶、血圧計・・。意外なところではワクチンの保存液に入っています。水銀 はもともと水銀鉱石を採掘してできるものです。ですから火山から出てくるし、鉱物を精錬すれ ば出ますし、鉱物が原料である石炭火力発電所からも排出されます。また、家庭内の水銀が集ま るゴミ焼却場周辺の水銀濃度は高いのです。

皆さん、水俣病は知っていますね。この世界的に有名な公害病の原因はメチル水銀です。工場 排水中のメチル水銀が水俣湾にいる魚に蓄積し、最初に猫が変な動きをし始め、ついには人間に も症状が出たのです。水俣病を九州地方の単なる公害病と思っていると大変なことになります。 「妊婦はキンメダイやマグロを食べないように！」と厚労省から通達が出ているのを御存知で しょうか？水銀による海洋汚染は実は世界中で起きています。海水に入った水銀は泥の中の細菌 に取り込まれ有機水銀（メチル水銀）に変化します。この水銀は海の生物の間の食物連鎖により 次第に大型の魚の身体に移動しながら蓄積します。プランクトンから小魚へ、小魚から中魚へ、 中魚から大魚へです。食物連鎖の最後に来るのは大型の魚です。カジキマグロ、クロマグロ、イン ドマグロ、ブリ、ハクジラ（バンドウイルカなど）です。キンメダイなどの深い海の魚に水銀濃度 が高いです。砂の中にいるアサリやハマグリ はなぜか低濃度です。イカも低濃度です。一 般的に小さくて若い魚が安全です。アジ、サ バ、イワシなどです。魚を餌にしないメジナ は大きくなっても水銀濃度は低いままです。 以前から東京湾のスズキは５０ｃｍ以上のも のは築地の市場に出せないという噂を聞いた ことがありました。理由がわからなかったの ですが、これが原因です。大阪ではそういう 規制がないので大阪に送ってセリに掛けるそ うです・・・。

　いつも行く寿司屋で他に客がいないときに、この水銀の話をし ました。寿司屋のオヤジは変な顔をしながら聞いていました。２ 週間後に友人を連れて食べに行きました。歯医者同士の話がある のでテーブル席に座り、酒を飲みつつ、いくつかおつまみが出 て、お待ちかねの刺し身の大皿盛りがやってきました。あれっ？ なんか変！？全体に色が白っぽいのです。そうです！マグロがな い！！中トロがない！！見事に仕返しされました！（笑）
約１ヶ月後に全員の結果が返ってきました。
歯科の世界に一番長いのは私です。自分が治療でアマルガムを詰めていたのは２０年前です。バ イト先と勤務医で大量に使っていました。かとう歯科では最初の2年間乳歯にだけ使いました。子 供は治療中におとなしくしていないので、唾液で濡れてもキチンと固まるアマルガムが非常に便利 なんです。現在の私の口腔内にはアマルガムはありません。約１５年前に治療し直しました。で すから、私の水銀は除去した時の気化した水銀と食事の水産物から入るのが主だと思います。今 後はアマルガムを除去するときは防毒 マスクを着けます。あしからず。

魚の方はしばらくはマグロ、カジキ、ブ リ、キンメダイなどは食べないことに します。他の５人の中で私の水銀値よ り高いのは一人だけでした。それも２ 倍程高いのです。しかし、歯科医院在 籍年数が一番少なく、勤めた歯科医院 はうちだけですから、アマルガムに触 れたことはありません。そうすると水 銀は除去時の気化した水銀と水産物からと思われます。私の方が患者さんの口に近いので実際に 吸った水銀はごく少量でしょう。ということはその水銀は主に水産物からと思われます。事実、 家ではマグロ、カジキマグロが食卓に出る頻度は高いそうです。さらに簡単な浄水器しか使って いないようです。その結果と思われますが、鉛、アルミニウムが高めでした。毎日梅干しを食べ ている姉の数値は低いのではないかと想像したのですが、それほど低くはありませんでした （笑）。過去にアマルガムを臨床でたくさん使った女性はそれほど高い数値ではありません。家 内も高くありません。取り込みが少なければ徐々に排泄できるのでしょうか？長男は口腔内にア マルガムもなく、歯科医院で働いてもいないのにそれなりに水銀がありました。これはワクチン や水産物でしょう。なぜかヒ素が異常値までありました。他には鉛が高かったようです。これは 学校の水道に由来するのではないかと思います。私の家族に共通するものはありませんでした。 全員アマルガムはありません。

　この結果を受けて、私と家内とAはデトックスのサプリメントを飲み始めま した。これはαリポ酸をメインにしたサプリメント（マイナス）と、いろいろ な栄養素を加えたサプリメント（プラス）です。これを３ヶ月ほど使ってみよ うかと思います。Bと姉と長男は薬物的には何もせず。私の自宅と診療所、姉 の家は逆浸透膜の浄水器を取り付けました。長男と姉は水を変えただけです。 Bは若いので当面様子見ということになりました。これでまた３〜６ヶ月程経過してもう一度毛髪 中の有害金属量を量ってみたいと思います。いったいどうなっていることやら・・・。

また道具の話　・・・歯科用マイクロスコープ・・・

皆さん、野口英世を御存知でしょう。彼は日本では「偉人」のひとりで、現在の千円札に肖像 画が使われています。彼は当時熱狂的に支持されて、３回もノーベル賞候補となりました。しか しながら彼の研究を再評価してみると、いくつかは正しい論文もありますが、彼の 研究の多くは後年間違いであったことが判明しています。彼の性格や行動にも原因 があるとは思いますが、彼がいたアメリカの大学では非常に低い評価だそうです。
　 　彼が最後に研究していた黄熱病は熱帯アフリカと中南米の風土病で、蚊によって 媒介される感染症です。彼は黄熱ワクチンを作るために期待されて現地に赴いたの です。研究の結果、彼は「ワクチン」を作り出し、現地で勲章を受けています。しか し、それは本当の黄熱ワクチンではありませんでした。結局、彼はそこで黄熱病に 罹り、命を落とします。彼の死後わかったことですが、病原体は黄熱ウィルスによ るものでした。彼が使っていた顕微鏡は光学顕微鏡です。光学顕微鏡は可視光を利 用するのでその波長により0.1ミクロンが限界です。したがって、彼がどんなに頑 張っても、0.1ミクロンより小さいウィルスを見つけることはできなかったわけです。当時はまだ コッホの提唱した「感染症は病原性細菌によって起こる」という考えが根強く残っていた時代で す。野口の先走りも仕方なかったのかもしれません。ウィルスのサイズになると光学顕微鏡では見 えず、電子顕微鏡によって初めて捕らえることができます。電子顕微鏡が開発されたのは1931年、 野口英世がガーナで死亡したのが1928年です。残念ながら見えるはずの無い「病原菌」を彼は「発 見」してしまったのです・・・。

　前回の「ひとこと」は見えない世界の話でしたが、 今回は「より見えるようにする道具」の話 です。 私がメガネタイプの拡大鏡を使って診療する姿をご覧になった方も多いと思います。現在 使っている拡大鏡は2.5倍です。ああいうメガネタイプの拡大鏡はテレビドラマの手術場面に登場 するので、見たことがある方も多いでしょう。2.5倍はそれなりに大きく見えます。４〜６倍もあ りますがメガネタイプでは視野が揺れて「船酔い」します。　
　ここ１ヶ月あまりの間、業者から歯科用顕微鏡を借りていました。実際 それを使って治療した方もいます。これはもともとは医科の手術用の顕微 鏡です。眼科、外科、整形外科、脳神経外科に導入され、最後に歯科に 入ってきました。通常、拡大倍率４〜８倍で操作し、１６〜２４倍で確認 をします。歯科での使用場面は歯の神経の処置、歯肉の審美的な微小手 術、審美歯科などです。特に神経の処置は今まで目では見えない状態で 「勘」を頼りにすることが多かったわけです。それが目で見ながら処置で きるので、見落としが少なくなる可能性があります。欠点は機械が高価な こと、見えにくい部位はやはり見えないこと、操作に時間が掛かり、保険 治療では使えば使うほど自分の首を絞めてしまうこと・・・・。　
　実際使ってみると８倍の世界は別世界です。今まで見えていた世界が全 く違う世界になります。当然、良いことばかりではありません。恐ろしいモノを見なくてはいけ ません。それは「治療してある部分」です。特に恐ろしいのは過去に自分が施術した症例です。 「裸眼で治療したんだからしょうがない」と思ってはいても、かなりツライものがあります。悲 しい話ですが、見えてしまうことはホントにツライものです。当然、１６倍や２４倍で見れば必 ず「アラ」はあります。それは人間が手を使って治療する限界です。この先は患者さんの頭をネ ジで固定して、術者が遠隔操作するロボットアームで治療することになるでしょう。
　親類の６０代の女性は片方だけ白内障の手術をして、もう片方はしないままでいます。なぜ、 片方だけでやめたのか聞いたら「よく見えるようになって、車の運転は安心できるようになった けど、鏡に映った自分の顔のシミ、ソバカスにガッカリしてしまった。もうこれ以上はハッキリ と見たくない。」のだそうです。ハッキリさせることばかりが良いわけじゃないですよね。
　今回欲しいなあと考えている顕微鏡はカール・ツァイスという昔、超有名だったドイツの会社 の製品です。カメラ好きの方なら名前は御存知でしょう。ロベルト・コッホがカール・ツァイス 製の顕微鏡で炭疽菌を発見し、細菌が感染症の病原体であることを証明したのです。日本海海戦 で有名な東郷平八郎はツァイスの双眼鏡を使っていました。

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