千葉県千葉市の加藤歯科・歯科医・歯医者では審美治療 ・メタルフリー治療・矯正治療 ・歯周病治療・インプラントの治療を行っております。
2013.02
みなさん「あいうべ体操」を御存知でしょうか?近頃、いろいろな場面で登場するこの体操は内科の先生が作りました。今回は彼の著書である河出書房新社の夢文庫から出ている「正しく鼻呼吸すれば病気にならない」みらいクリニック院長 今井一彰著をネタにしてみたいと思います。
彼は普段の診療の中で、リウマチなどの自己免疫疾患の患者さんには独特の異臭があることに気づきました。その患者さんをよく観察するとその多くが口で呼吸していました。あたりまえのことですが、鼻は呼吸器官で、口は消化器官です。本来、別の機能ですが、人間は言葉を得たことで口でも呼吸できるようになったのです。進化したわけですが、その分だけ病気になりやすくなったわけです。彼曰く、関節リュウマチや花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、うつ病、化学物質過敏症、ドライマウス、慢性副鼻腔炎、歯周病、いびき、睡眠時無呼吸症候群などが口呼吸に関係するようです。
口呼吸チェックリスト右の項目一つでもチェックが入る人は口呼吸の可能性があります。私自身が矯正治療前は4項目チェックが入ります。家内は5個チェックが入るようです。(笑)
「いったい鼻呼吸と口呼吸って何がどうちがうの?」って、思う方もいるでしょうから、簡単に説明します。 鼻呼吸をすると吸い込んだ空気がほどよい温度と湿気を帯びて肺に運ばれます。鼻の入り口から咽頭(喉の入り口)までは15cmですが、入り口付近は副鼻腔が囲んでいて温度と湿度を調整するのに役立っています。また、空気中のホコリや花粉、さらには細菌やウィルスを鼻腔の内側にある繊毛と粘膜によって濾過しています。吸い込んだ異物はここでブロックされ、鼻汁に混じって排出されます。濾過された空気は鼻の奥の上咽頭という空間に入ります。上咽頭粘膜と咽頭のリンパ組織(ワルダイエルのリンパ輪)が気道への異物侵入を防いでいます。鼻呼吸をしていれば喉を痛めたり、病原菌の侵入を少なくできます。一方、口呼吸だと口から入った空気が口の中の水分を奪いながら、荒々しく肺の中へ入ります。空気に湿気が少ないと、肺胞(肺を構成している小さな袋で、ここで酸素と二酸化炭素が交換される)の粘膜の働きが悪くなり、鼻呼吸に比べて酸素の吸収量が減ってしまいます。口の中が乾燥するために唾液による殺菌、消毒作用が不じゅうぶんになり、悪玉菌が繁殖しやすくなります。歯周病や虫歯が悪化するのは当然です。さらに唾液中の抗菌作用や分泌される免疫物質の働きが低下します。風邪をひきやすくなるし、咽頭炎、扁桃炎にもかかりやすくなります。免疫作用の低下は、異物をブロックするはずのリンパ組織自体が悪玉菌のたまり場になり、充分に働けなくなるからです。
どうしたら口呼吸は治せるのでしょう。まずは、自分が口呼吸をしていることを自覚することです。チェックリストを参考にしてみてください。口が開いていると抵抗がないので、口で息をする傾向があります。前歯が飛び出したりして、歯並びが悪いために口が閉じない方は歯並びを治さない限り難しいです。鼻の詰まりがある方はそこを改善しないといけません。まず、夜寝るときに上下の唇にサージカルテープを貼って寝てみてください。横に貼ると苦しいかもしれないので(笑)、縦に貼ってください。朝までそのままであれば、鼻呼吸できています。 ここからは私(加藤)の説明を加えます。この著者はいろいろとトライしてみても、どうしても治らない口呼吸の原因として右のような舌の位置を問題にします。正常な舌尖(ベロの先っちょ)の位置は、上の前歯の根元にある小さな山に触れるところが正しく、ベロ全体が口蓋のくぼみに嵌まる状態が良いとされています。小児の場合、このベロのポジションは上顎の発達を促すために重要な位置です。モノを飲み込むときもベロはここに来るので、理屈の上では正しい鼻呼吸をしていれば何もせずに歯並びもキレイに並ぶはずです。 いろいろな原因で鼻呼吸ができなくなり、 結果として口呼吸になった場合も同じです。下の図のようにベロの先端が下の歯の根元や前歯の後ろに来る場合は、望ましい位置ではありません。このベロの位置の問題は非常に根が深く、乳児のころの母乳の吸い方から始まり、指しゃぶり、アレルギー性鼻炎、柔らかい食べ物などが原因になります。
「自分は正常だ!」と思っている方も試しに正常な位置にベロを置いて、生活してみてください。私も徒歩通勤中、この位置にベロを置いてみました。常に意識して置いておかないと勝手に外れてしまいます。やはり、自分も基本的に口呼吸患者なんだなと自覚しました。幼稚園、小学生の内にこれができれば、矯正治療しなくてもキレイに歯が並ぶ人はかなりいるんじゃないでしょうか。
今回のネタはうちの家内も興味があったようで、1/13にセミナーを受けてきて、本にサインをもらってきました。「ベロを伸ばせば人生変わる!」そうです。(笑)
うちの家内は潰瘍性大腸炎だったという話は以前にしました。口腔内金属をなくしたことで完治しましたが、見事に口呼吸です。冬場にリップクリームが必須という人は口呼吸している可能性が高いと思います。彼の観察では90%もの人が口呼吸ということです。実は私もずーっと口呼吸でした。小さい頃は鼻が悪いというよりも、アデノイド(咽頭扁桃肥大症)という診断で、小学校低学年で摘出手術をしました。千葉大医学部の耳鼻科で取りました。昔は外来でやったんですよね。(笑)
しかし、それでも口呼吸は治らず、歯列不正となりました。でも、切除の目的は「発熱しないようにすること」でしたからね。「たら、れば」ですが、同時に舌の位置を治すべく、口蓋を広げる装置を入れれば原因療法になったかもしれません。矯正患者さんの気持ちを理解すべく、無謀にも50過ぎてから歯列矯正を始めたら、意外にも鼻呼吸が楽になりました。(笑)
家内によると、アルコールを飲み過ぎの時は睡眠時無呼吸症候群でもあったようですが、これも治りました。
私が「あいうべ体操」を知ったのは最近ですので、体操をして良くなったわけではありませんが、やり方は右の図を参考にしてください。舌の位置が良くなると鼻呼吸しやすくなります。
もう1冊、上咽頭に関してお医者さんが書いた本があります。これはIgA腎症を専門にしている堀田修先生が出しました。お医者さんの中でも専門外のことを書くといろいろと問題があるようですね。腎臓の専門医が上咽頭(耳鼻科領域)絡みの論文を書いても無視されるようです。(笑)実は、上咽頭の炎症を抑えると特定の腎炎が治るんです。 こちらも「口呼吸が問題である」そうです。その予防として鼻うがいを薦めています。 IgA腎炎は免疫グロブリンというタンパクが原因で起こる疾患です。医学の中に「病巣感染説」という説があります。これはヒポクラテスの時代から言われていましたが、約100年ほど前に非常に流行ったそうです。病巣部位としては歯周病と歯の根の病気(根尖病巣)がヤリ玉にあげられていました。(どちらもかなり高い確率で放置されていますね、今でも。)しかし、当時は免疫学の知識が不十分で、当時主流の説であった「疾病の局在論」を覆すことはできませんでした。この「疾病の局在論」を根拠にして、現在の病院の部位別診療科システムができあがっています。
これに対して、例のバイオレゾナンス医学会は根尖病巣や歯周病による病巣感染説、口腔内金属の違害性を当然のこととしています。 実は1月のバイオレゾナンス医学会のテーマの一つは「あいうべ体操」でした。(笑)正しいことはどこのジャンルでも正しいんでしょうね、きっと。